2人が本棚に入れています
本棚に追加
やがて金色の小さなお堂が見えてきた。フンワリと光って、まるで浮かぶように鎮座していた。京都御苑へは何度も訪れていたけれど、こんな建物は無かったように思う。
「ああ、あちらですあちらです、さあさあ、そこに自転車を停めて」
アルパカの言う通り、その場に自転車を停め、アルパカを抱きかかえて砂利道へとおろす。
「ありがとう」
丁寧にアルパカは首を曲げた。僕も「どういたしまして」と返す。
「きた、きた、お待ちしていました」
お堂の中から、わらわらと小さな童子たちがでてくる。どの子も髪を両耳の横で束ねて8の字、いわゆる「みずら」にしている。古代の髪型というか、聖徳太子像のような髪型だ。
「こちらの方はぼくの知り合いです。同席しますがお気になさらず」
「そうですかそうですか、もちろん構いません。どうぞどうぞこちらへ」
アルパカが僕を(かなり雑に)紹介すると、みずら童子たちは僕の雨合羽の裾をひっぱるように金のお堂へと誘った。
お堂の中は案外広いものであった。外側と同じで金ピカで、しかしがらんとしていて誰もいない。ところどころに謎の布が下がっている。朱色、白、黒、青、黄色、紫。それが時折、ゆら、ゆらりと揺れていた。
どうしたものかとボウっと突っ立っていると、アルパカは僕の横で何もない空間に向かって、ぺこりと頭を下げ始めた。
「ミカドさま、ご機嫌うるわしゅう」
最初のコメントを投稿しよう!