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吉野 明日香
私たちが家を買ったのはつい先月、今から十三日前だ。
この新興住宅地のなかで唯一の空き物件だった。角地で高いから売れ残っていたわけではない。見栄を張って総介には言わなかったが、中古住宅なのだ。最後に売れ残った家ではなく、最初に空き家になった家ということだ。
建ってまだ四年だから新築同様だし、間取りも気に入っている。なんだか室内に靄のかかったような薄暗さを感じたけれど、電気のせいだと思った。新しい蛍光灯を買えば済む話だから、躊躇なく購入を決意した。
そして引っ越しの日。
荷解きをしているうちに夜になり、まだ開けきれない段ボール箱にもたれて一息ついたときのことだ。
「ほんとラッキーだよね。まだ全然綺麗だし」
リビングを見渡す。物が少ないせいもあって、余計に広々として見えた。
夜ご飯を食べ終えたきららが、疲れたのかソファで寝息を立てている。
「タイミングが良かったな」
ケイは答えたあと、ふと天井を見上げる。
「にしても暗いな。もう駄目なんじゃねえのかこの電気」
「明日買ってくるよ。どうせ買い出しするつもりだったし」
あくびをしながら答える。
突然、玄関で大きな音がした。
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