柳 総介

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「……二日間に二回も家族写真が割れたってことか」  長いメッセージを読み終え、俺は溜息を吐いた。 自室のベッドの上だ。いつの間にか息を詰めていたらしい。  その後は帰ってきたケイに報告したが、重くは受け止められなかったようだった。安定の悪い場所に置いたから写真立ては二回も割れ、引っ越し疲れで娘が変な絵を描いた――たまたまそれらが重なっただけだと言われ、明日香も無理やりに自分を納得させた。  実際、次の日から昨日までの十一日間は何事もなかったようだ。きららの様子も元に戻ったし、三たび飾った写真はピン止めにしたところ無事らしい。だからこそ三日前の彼女はあんなにも嬉しそうに家について語っていたのだ。  しかし、異変が収まった代わりにケイの帰りが遅くなった。機嫌が悪いことが多く、夕食も外で済ませがちになってきたという。 「……帰りたくないってことか?」  初めて訪れたときの、あの不快感を思い出す。忌むべきものに触れたような……自分が穢れたような、そんな感覚だった。 あれと同じものをケイも毎回感じているなら、そりゃ帰りたくもなくなるだろうなと思う。オカルティックなものを信じる方ではないが、今回ばかりはそれを疑った。 「だって普通、あんな家買っといて四年で引っ越すか……?」  高いはずだ。気軽に売り買いするようなものではない。まさか事故物件なのではないか。 「でも、そうなら説明があるはずだよな」  告知義務があったはずだ。しかし明日香からのラインにはその点について書かれてはいない。事故物件というのは考えすぎなのか。それとも、不動産屋に隠蔽されたのか。  前入居者がなぜ手放すに至ったのかが知りたい。そこにヒントがあるかも。  俺はその考えをスマホに打ち込んだ。 長い長い返事は、次の日の朝に返ってきた。
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