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「ケイがいないときに良かったのか?」
平日の夜、再び吉野宅に足を踏み入れた。
リビングの奥、カーテンの閉められたテラス戸のそばで、きららが黙々と人形遊びをしている。
「良いよ総介だし……それに、最近はこんな早く帰らないしさ」
夜の八時だ。ローンのために残業続きということだろうか。
「ご飯食べた? まだならあるよ、残り物だけど」
「いや、大丈夫。それより」
急に呼び出した理由は何か。明日香の疲れたような表情からして、あまり良い理由ではなさそうだ。
「……あのね。あの人って、浮気とかできるタイプ?」
ソファに挟まれたガラステーブルに二人分のコーヒーが置かれた。
彼女が対面に座る。突然の質問に面食らったが、少し考えて答えた。
「したとしてもすぐバレるだろうな。顔に出るタイプだから」
「私もそう思う」
神妙な顔で即答し、明日香は続ける。
「最近、急に帰りが遅くなったんだよね。それだけならローンのために頑張ってるんだなって思うんだけど……ずっとイライラしてるっていうか、私に当たりが強くなってきてさ。きららにはそんなことないのに」
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