18人が本棚に入れています
本棚に追加
「おはよー」
「おぅ」
父がすでに半分は食べているご飯の器を抱えながら、もごもごとこたえる。
「あぁ、もぅパパったら、ご飯を食べながら喋らないの!ほら、顔にご飯粒ついてる!」
お母さんがそう言いながら、お父さんのほほのところについたご飯粒をとり、それを食べてしまう。
「あ、ほんとだ。ありがとう、ママ。」
「もぅ、次からは気をつけてよ。」
そして、2人は見つめ合う。2人の間に、ハートが浮かんでいるのが見えてきそうだ。
(毎度のことだけど、見ているこっちが恥ずかしいよ....)
しかし、なぜこんな茶番のような夫婦から私みたいな真面目ちゃんが生まれてきたのだろう。人類最大の謎かもしれない。
「あ、もうこんな時間!優香!ご飯食べ終わった?
あら、まだじゃない!!いっつも言ってるでしょ。ちゃんと時間みながら食べなさいって。全くもう。」
「え、けど、お父さんも....」
「ごちそうさま!」
お父さんはそう言うと歯磨きをするべく、そそくさと洗面所の方へ歩いて行った。
なんて早さだろう。さっきまで半分は残ってて、今の今まで、お母さんと茶番を見せびらかしてたのにもう食べ終わっている。
早食いかなんかに出られるんじゃないか....
そう思ってご飯が入っていた食器の方を見てみると、ご飯の皿は見事に空っぽだが....
「パパ....お野菜は....?お味噌汁のナスも残っているわよ....?」
お母さんが目が笑っていない笑顔で、そして妙に響く声で言う。
「い、いってきまぁす!!!!!」
ガチャ
バタン
「パパァ!!」
そんなこんなで優香が生まれ変わるであろう日がはじまったのだった....
最初のコメントを投稿しよう!