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「おはよーう、おはょう、おーはよ、ぉはよう....」
真っ青な空の下、住宅街を歩く人々にジロジロと見られていることにも気付かず、1人の少女が空中で目線をさまよわせながら、ぶつぶつと呟いている。
少女の名前は、“藍花優香”この小説の主人公である。
その主人公が、なぜぶつぶつと奇妙につぶやいでいるのか。それはこの土日のこと。
優香は、その2日間で、どうやってしたら、バカになれるのか、調べた。そして行き着いたのが、挨拶だったのだ。
案外単純かもしれない。しかし、何をするにも人とコミュニケーションをとるときには、まずは挨拶が必要とされる。最初の挨拶でその人のイメージがつくられるといっても過言ではない。よって、挨拶はとても奥深いものであり...
「....?」
ふと、何か顔に違和感を感じ、顔に手をやる。
...嫌な予感がする。
「....」
沈黙
「!!!!!!!!!」
少し遅れて気づいた。
「な、ななな、ない!?」
めがねがなかったのだ。
その声にそこを歩いていた人々は、振り向く。そして、その声の主の顔、いや、表情を見て、ある人は肩を震わせ笑い出す。ある子供は泣き出す。
優香はそんなことにはさらさら気付かず、またもやぶつぶつとつぶやきだす。
「え。え。めがねは。めがねめがねめがね。ない。ない。なぜ。ないよ。なんで。え。いえ。え。なんで。なんで、気づかなかったの。え。え。や、やばい。何も見えないじゃん。これじゃ。え。けど。見えてる。え、え。....」
優香はつぶやきながら、その場をぐるぐると回り始め、突如コンクリートの壁へ歩き出したかと思うと、額をその壁にコツンとあて、とまった。
その行動に周りの人は、優香の人格について心配しだす。
「あ。」
そして優香は気づく。
「コンタクトにしたんだった....」
静かな道にその声は虚しく響いた。
周りからの冷たい目線を浴びながら、優香は、その場をそそくさと後にした。
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