18人が本棚に入れています
本棚に追加
【第1関門:靴箱】
校門をくぐり、歩いていくと見えてきたのは少しくもったガラスドア。その向こうにぼんやり見えるのが、私たちの靴箱だ。
学校までの道のりでどれだけ努力して、クラスメイトを避けたとしても、この靴箱では逃れることができない。
大抵靴箱では1人とはクラスメイトと顔を合わせることとなる。
私はここで、挨拶ができるようにこれまで練習してきたのだ。
(がんばるぞ....)
グッとこぶしを握りしめ、そう決心すると、その手で靴箱という学校の入口への扉を開ける。
左右にドンと置かれている靴箱の、私の靴が置いてある右の靴箱へと歩いていく。
聞こえてくるガヤガヤと駄弁る子供の声は今から学校が始まるという事実を一層私に知らしめる。
私は、心が少し曇り始めるのに気付かないふりをしてもくもくと歩みを進めた。
自分の靴箱の前で立ち止まり、扉を開け靴を取る。
コツコツコツ
上靴を履いていると靴音が聞こえてきた。もちろん私のものではない。
(き、きた....)
ゴクン
すでにカラカラになった口で唾を飲み込む。
スーッと息を吸って右を向きながら、
口角をあげ、笑顔の形を作る。
そして、靴を取ろうと靴箱の扉に手をかけているその女の子、境 菜乃花(さかい なのか)の正面に立つ。案の定、私のクラスメイトだ。
その子は私の視線に気づいたようで、ふっと私の方を向く。
目が合った。
ーーーーーー今だ!
最初のコメントを投稿しよう!