8人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
多くの死を見つめてきた。
多くの仲間を失い、家族を失い、多くの者の屍を積み上げて、平和というものの始まりを作り上げた。
それは本当に『平和』と言えるのだろうか。
共に戦ってくれた仲間たちは声をあげて喜ぶ。戦場に散った友のために泣く。
俺は、素直には喜べなかった。
大切な人たちを失ってまで、手に入れた平和に何があるのだろう?
戦乱の中、俺は軍師と呼ばれた。
知恵を使って、何千何万の命を奪った。
その見返りなのだろうか。
兄と弟を奪われた。
そのため、今の俺に家族と呼べるものはいない。
どうしようもなく冷たい風が俺の胸に響いてくる。
戦乱が終わった今、悠久の平和を作り上げるために俺の知恵は役には立つだろう。
だが、もういい。
俺は、人々が戦乱の終焉に歓喜する中、一人旅立った。
最初のコメントを投稿しよう!