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其れまでの大野は非常勤の冴えない高校教師生活を送っていた。
年齢は30代半ば…………。
老いを語るには早いが、もう若くもない。
そろそろ身を固めろと周りも煩くなって久しい。
不細工という程ではないにせよ、
平凡かつ、何処か野暮ったさを残す自分に、
いまいち自信の持てぬ大野は、自分の人生には恋愛や結婚など無縁のものと決めつけていた。
それ故、焦りや寂しさはあるものの、
理想的な未来を思い描くのに積極的になれぬ
自分がいた。
もう若い頃のトキメキなど自分が感じる事など無いだろう。
自問する度、そう結論づけた。
遅咲きの春の嵐が駆け抜けたのは、
そんな…………
全てを、諦めたフリした時だった。
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