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人気の少なくなった校舎………
傾いた陽射しが淡く照らし出す教室…………
放課後のこの時間だけが、沙夜香と二人きりになれる、貴重な一瞬だった。
本当は、いつだって、こうして二人きりで過ごしていたい。
それが、大野の本心だ。
けれども、教師として、
沙夜香のみを熱心に指導する姿を誰にも見られてはならない………。
(これは飽くまで生徒指導の一環だ。
別に疚しい事なんて何も無い。
それに、皆が居るより、二人きりの方が……
彼女も素直に悩みを相談し易いだろう……)
そう自分に繰り返し言い聞かせ………
胸の奥底に眠る……一抹の欲望には蓋をする。
気付いてしまえば『教師』でいられなくなるから―――――。
飽くまで、自分は教師として、彼女に向き合っているのだと言い聞かせる。
誰に対する言い訳なのか…………
自分でも、良く解らない。
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