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雨だ。灰色の空から降り注ぐ。それは限りなく優しく感じる時もあれば、鬱陶しく感じたり、憂鬱になったりと色々だ。それは季節により、また気分によりその時々で感じ方は色々と変わる。
この雨は翡翠の雨だ。草木を優しく育む。それは植物が持つ本来の翠色をより鮮やかに、より艶やかに魅せる。初夏の翠雨だ。
こんな雨の時、決まって思い出す事がある。
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「やーい、あーめおんなー!」
「こっちみるなよー。あめふるだろー」
「つゆいりがはやいの、あのこのせいよ」
「あめばっかりふるの、あのこがわるいんだよ」
5.6人に囲まれて囃し立てられ、えーんえーんと声をあげて泣きじゃくる私。幼稚園の頃だ。私は雨女と呼ばれていた。
雨女。何故か私がいると雨が降るから、らしかった。でもそんな事はない。確かに出かけようとすると雨になる確率は高かったけれど、曇りの時だってあったし、晴れてる日だってあった。
私が「雨女」と呼ばれる切っ掛けとなったのは、初夏の日、幼稚園の教室から窓の外を眺めていた。私を雨女と呼ぶ事になる5.6人と共に。青々とした草木に降り注ぐ雨。私にはそれが限り無く優しく、慈愛の雨に見えた。
「あめ、やさしいね。草や木がげんきになるね。こういうあめ、翠はだいすきなんだ」
ただ、思った事をそのまま口にしただけだった。穴の開くように私を見つめる彼ら。
「こいつ、あめがすきなのか? きもちわるいやつー」
「あめおんなじゃね?」
「あめがすきだなんてへん。おかしい」
「きっとあめがふるのはこのこのせいだよ」
「やーい、あめおんなー」
あっと言う間に他の子達も寄ってきて、
「翠ちゃんてあめおんななんだって」
「なにいそれキモい」
「うちのバラからしたの、翠ちゃんのせいでしょ」
「うちのサボテンからしたのあいつのせいだな」
こうして私は雨女と呼ばれ、毎日揶揄われるようになった。
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