年末年始

16/24
707人が本棚に入れています
本棚に追加
/1103ページ
ひとまず鬼頭さんが水を入れたポリタンクを一つ持ってきました。それを受け取ったちらんさんは麺つゆを薄め火にかけます。並ぶ人たちの前で堂々と市販の麺つゆを使っていますが、並んでいる人たちも無料なのを分かっているので何も言いません。辺りには美味しそうな香りが漂います。 少しすると「通してください」とまた聞き覚えのある声が聞こえてきました。声のする方を向くと漆黒さんに黒羽さん、その奥さんたちまでいるではありませんか。皆さん普段とは違い、人間らしい普段着で来る辺り空気を読める妖怪ですね。 「お待たせしました」 そう言って漆黒さんたちもテントの中に入って来ましたが、それぞれ両手にはかなり大きなビニール袋を持っています。そのタイミングで鬼塚さんも戻って来ました。が、その両肩にはポリタンクが二つずつ重ねて乗っています。計八十キロですよ?一般人は鬼塚さんを見てドン引きしています。 「山田っちに『それだけあれば充分でしょう!忙しいんですよ!』って追い返されちまったぜ!」 ブーブー文句を言っていますが、本当に充分だと思います。 ちらんさんはそんな鬼塚さんをスルーして寸胴に水だけを入れています。鬼頭さんだけは鬼塚さんをなぐさめています。全くもっていつもの光景です。 「カラス!袋をもらうにゃ!」 ちらんさんは漆黒さんたちから袋を受け取ります。にしても『カラス』って……。いや、カラスなんですけどね。もう一般人のことが見えていませんよね?漆黒さんたちも気にする様子はないのでいいのですが、猫とカラスが同じ場所にいるので少々ハラハラしてしまいますね。
/1103ページ

最初のコメントを投稿しよう!