年末年始

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鍋が沸騰し始めると、ちらんさんは受け取った袋から何かを取り出します。あ、そばです!どうやら漆黒さんたちは二十四時間営業のお店や深夜営業のお店、そしてコンビニを回りそばを大量に購入してきたようです!それを指示したのはぬんさんだとか。 沸騰する鍋にそばを入れると、ちらんさんは持って来たタイマーをセットします。 「赤にゃん、青にゃん、今のうちに休むにゃ!」 テキパキと指示するちらんさんに従って、赤さんと青さんはフラフラとこちらへ向かって来ました。そしてしゃがみ込んで思いっきりため息を吐いています。 「ずっとこうなのか?」 ちらんさんに「邪魔にゃ!」と追いやられた鬼塚さんが、漆黒さんたちからの差し入れのスポーツドリンクを赤さんたちに渡しています。 「んだなぁ……」 グビグビっとスポーツドリンクを飲んだ赤さんが言うには、昼過ぎはほとんど人がいなかったそうです。その時点で山田さんは既にいっぱいいっぱいになっており、照明の設営も完了していなかったので赤さんと青さんとで境内内の増設照明を全て設置してあげたのだとか。 そして三時前後にようやく自分たちの持ち場であるこのテントを建て、鍋の準備などをしていると参拝客に声をかけられ始めたそうです。 『今日は年越しそばが無料なんだぁ』 と赤さんが答えたところ、口コミと地元ネットワークで広がり、気付けば暇を持て余した近所の方々が長蛇の列を作っていたのだとか。振る舞うのは十時くらいからを予定していたのに、もう断れない雰囲気となってしまいそこからは時間の記憶すらもないと言うではありませんか。 無料って怖いですね。
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