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気になった私は恐る恐る聞いてみました。
「……この着物が何か……?」
「ううん、萌にゃんとユキにゃんに貰ったなら納得!」
あぁ……なんとなく言いたいことが分かってきました……。
「この着物ですが……」
そう話し始めたちりさんを止めました。
「ストップ!……年代物だとか、金額を言おうとしていますよね?」
「はい、そうですが?」
ちりさんは小首を傾げます。
「……金額とかを聞いちゃうと、絶対にこの場で脱ぎたくなると思うので言わないでください……」
青ざめながらそう言うと周りのみんなにも笑われてしまいました。
「では金額は言いませんが、代わりに忠告を……その帯留めと髪留めは絶対に落としたらダメですからね!」
クワッと目を見開き、今までに見たことのない表情をちりさんはします。着物は高いだろうと思っていましたが、帯留めなどはプラスチックかな?くらいに思っていた私はカタカタと震え始めました。
「金額は言いませんよ。ただ……国宝級ですからね」
はい。私は安定の白目を剥きました。
「百合子、人も少なくなったことだし参拝しようではないか」
ぬんさんの言葉のおかげで何とか白目から脱しました。
いそいそと参拝客の列に並んだ私とぬんさんですが、時間も時間ですしかなりスムーズにお賽銭箱の前に進むことが出来ました。
『百合子はどんな事を想うのでしょう?』
今まで屋根の上にいらっしゃったウカ様が、わざわざ私たちの目の前まで降りてきてくださいました。もちろん一般人には見えません。
子どもの頃の私だったら「○○が欲しいです」とか願っていたことでしょう。ですが今日の私は違いますよ。
『着物を汚さず、帯留めも髪留めも落としませんように』
全力で手を叩いて心の中で想うと、ウカ様に筒抜けなせいかウカ様の笑いが止まらなくなってしまいました。
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