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ガチガチに震えながら商店街に向かい、そしてぼったくりを目指しました。店の前には『本日貸し切り』の貼り紙がされ、カギもしまっています。一般住宅ではないので、もちろんピンポンなんてあるはずもなく、私は入り口の扉を叩きます。というか、中に入れてください。凍死しそうです私。
「貸し切りって書いとるじゃろがぁ!ボンクラがぁ!」
安達ヶ原の鬼婆さんこと安達さんは今日も通常営業のようです。めちゃくちゃ怒鳴りながら、包丁片手に店から出て来ました……。
「どこのボケナ……ん?……遅刻じゃボケェ!……と言いたいところじゃが、大丈夫か?」
言いたいことの大半は言ってますよね?ですがガチガチに震える私を見て心配してくれています。たまに見せる優しさに、隠れファンは急増中と伺っていますよ。
「おう姉ちゃん!……どうした?まず座って乾杯前にこれ飲みな!」
店内に入ると、私に気付いた鬼塚さんがいち早く異変に気付いてくれ、さらに鬼塚さんのかゆいところに手が届く働きをする鬼頭さんが、お鍋からとんすいに熱々の汁をよそってくれました。
「……あ゛あ゛あ゛あ゛……生き返る……あと熱燗ください」
温かいものを飲みながら華麗にお酒を注文し、そしてクッキーに乗ってきたことを言うと鬼塚さんたちは察してくれたようです。
「……よくこの寒空の下、乗ろうと思ったなぁ……」
「烏天狗さんたちを酷使するのもアレかなと思いまして……」
寝坊したなんて口が避けても言えません。
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