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百合子の頑張り
二月に入って少し経った頃、萌さんがふと呟きました。
「……なんか〜臭うのよね〜……」
「私じゃないですよ!!」
しぃちゃんと焼き芋を食べていた私は咄嗟に返しました。
「違うわよ〜。そういうのじゃなくて〜、う〜ん……何の臭いだったかしら〜?」
萌さんは鼻をヒクヒクさせていますが、それを見たユキさんがツッコミます。
「元は獣だからな。鼻が効くんだろう」
「ちょっと〜!獣とか言わないでくれる〜!?狐だから〜!」
安定の二人のケンカが始まってしまいました。
「まぁまぁ二人とも。焼き芋でも食べませんか?美味しいですよ?」
二人にそう言うと、ピタリとケンカが止み「食べる」とこちらに来ました。
「臭うってどんな臭いなんですか?」
必死に皮を剥きながら聞くと、萌さんは少し考えながら答えてくれました。
「……う〜んと〜、臭いの〜」
私たちは一斉に溜め息を吐きました。
「ただ〜、昔〜嗅いだことが〜あるはずなんだけど〜思い出せないのよね〜……」
「しぃは感じない!」
「私もだ。獣はやはり違うな」
またしても萌さんとユキさんはケンカになってしまいました。
「ぬんさんや赤さんたちは感じないんですか?」
目の前で罵り合う二人を放置し、別のテーブルでお茶を啜っているぬんさんたちに声をかけました。
「臭いだけでは分からんのぅ。そもそもそんな臭いなど感じないわい」
ぬんさんはそう言いますし、赤さんたちは「警報器を見てくる」とキッチンへ向かいました。
「違うの〜。そんなんじゃないの〜」
萌さんはそう訴えますが、私たちには分かりません。
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