結婚

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結婚

「あーどうしよう。もう恋愛なんて怖くてできないっ。」 高校時代の友人が食事をしようと誘ってきた。 交際相手と別れたらしい。 「この歳でしょ。これからまた男探して一からやり直ししてって 考えるとねぇ…」 男と別れて悲しいんだか結婚相手を探すのに焦っているんだか 分からない。 私は黙って、食後のコーヒーを飲む。 「あら、ゆり子ホットにしたの?この暑いのに」 「冷房効いてるもん大丈夫だよ。」 お腹が温まる感じが好きなのだ。 じんわりして、自分が大切にされているような気がする。 「あんたはいいわよね、あんな若くてよさそうなの捕まえて」 伊織のことだ。一緒に歩いている所を見られた。 根ほり葉ほり聞いてくる彼女には、 大学の後輩と偶然会っただけだと話したはずだけど…。 「結婚、いつ?」 友人は探るような目を光らせてこちらを上目遣いに見る。 「しないわよ」 きっぱり言った私に友人は驚いたような顔をする。 ちょっぴり嬉しそうに、ほっとしたように口角が上がっている。 「たまたま街で会った後輩って言ったじゃない。 私は誰とも付き合ってないし、結婚も考えてないわ」 「えーっ」 大げさに驚いているけれど、内心喜んでるのがよくわかる。 「あ、お見合い話が一つきた」 「えーっ。いいなぁー。私にもそういうおせっかい焼き、誰かいないかなあ」 周囲の結婚話に神経質になってるんだろう。 仕事がつまらないんだろうか。 家族から結婚をせっつかれているんだろうか。 見苦しい程焦っている。 私は結婚なんて、できないだろう。 セックスするために経口避妊薬(ピル)を医者から処方してもらって セフレを一人捕まえて呼び出しては 相手の私への気持ちをいいことに奉仕させているのだ。 こんな雌犬(ビッチ)、結婚する資格なんてない。
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