王子

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一生懸命拙い英語を駆使して会話をした。国際電話は料金高いだろうな、電話代は向こう持ちかな? なんて考えながら。 何度も電話するうちに、フィリップ王子はとても良い人であると感じた。好感も持てる。 向こうも徐々に私に対して熱量が上がってきている事も、なんとなく実感していた。勘違いだったらただの笑い者だけどね。 そして同時にフィリップ王子に対して罪悪感がうまれ出す。 取り繕って相手をしているだけ。そんな状態に嫌気がさしたのだ。いきなり日本語であのように話したら、フィリップ王子は黙った。 そりゃそうだ。いきなりそんな風に言われたら呆気にとられるよね。それだけならまだいい。もしかして怒ってなにか別のトラブルが発生したら、まずい。なにがって、国際問題に発展したらどうしよう。責任とれない。 「あの、誤解しないでください。フィリップ王子とお話しただけでとても私の心は軽やかになるしとても楽しく夢心地な気持ちになりました。だからこそ、あなたはもっと煌びやかな方ときちんと出会われた方がいいと思ったんです」 あれ? 今まで英語で話してたけど、こんなに日本語で捲し立てて話通じてるかな? 疑問はあるけど、こんな小難しいこと英語で話せるほど私の頭はよろしくない。 「あなたと話して、私は徐々にあなたに惹かれ始めていました。こんな形で終わりを迎えて悲しいですけど今までありがとうございました」 あなたは私の王子様でした。 なんて、寒いセリフは口には出せなかった。いや、出さなくてよかったかも。 そして、私と王子の電話は終了した。
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