1人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
【T-2】 戻れるなら
やっと見つけた。探し初めて二年かかった。──いいえ、二年で見つけられた私は幸運かもしれない。
偶然通りがかった森の奥の公園に、それは遊具の一部として置かれていた。
二年前、私は交通事故を起こした。
結婚間近の彼を失った。
その喪失は大きく、私はタイムマシーンのことを思い出して探した。そして、やっと──。
「イラッシャイマセ」
機械の声がする。
「オ望ミノ時間ヘオ連レシマス。タダシ、代償ハ貴方ノ余命、一年デス。ソレデモ、貴方ハ過去ニ戻リタイト願イマスカ?」
「はい」
私にはなにのためらいもない。
一年生きられなくなるだけで、彼が生きていてくれるなら。
「カシコマリマシタ。ソレデハ、目ヲツブッテ戻リタイトキノコトヲ思イ出シテ下サイ」
私は言われる通りに目を閉じる。
あの日、私が運転する直前へ。
「長い間、運転したから疲れたでしょ? 私が運転代わるよ」
「大丈夫?」
目の前には──彼が!
本当に戻れたんだ。信じられないけど、うれしい。
「うん。次のパーキングエリアまでだから……ちょっとだけど休んでね」
婚前旅行──に行くはずだった。とっても楽しみだった旅行。彼の助けになればと、普段運転しない私が運転すると言いだしたんだっけ。
「ありがとう。じゃ、すこし寝るね」
「うん」
タイムマシーンを使う前の彼の最後の言葉。このまま、永眠するとも知らずに。
「おやすみ」
事故を起こした場所は覚えている。だから、今度こそこの言葉を彼の最後の言葉にはしない。
グッとハンドルを握る。
今度は、おはようと言ってね。
婚前旅行もたくさん楽しもうね。それで、結婚もしたい。子どももほしい。
普通の生活でいい。
贅沢なんていらないから、家族になろうね。
幸せな家庭を築こうね。
未来は、私が握っている。
最初のコメントを投稿しよう!