【T-4】 戻れない

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「突然死です。何度も平気だったと言っても、また戻ったとき以前のように平気なままという保証はありません」  意味がわからないと彼は(ののし)る。 「タイムマシンを使ったのは、あなただけだと思いますか? 何人が、いえ、何十人、何百人、何千人……はたまたそれ以上の人たちが使ったとして……使う度にわずかでも変化が起きたら。何度も平気だった、それこそが偶然だったのかもしれません」  あたかも見てきたかのように私は堂々と言う。はったりが効いたのか、彼は黙った。 「それに、です。あなたは何度も、そう、何度も何度も戻りました。このタイムマシンを使って。タイムマシンは一度の使用に余命を一年頂きます。あなたは、何年の余命を使いましたか? あなたの余命は、あとどのくらいあると思いますか?」  彼の顔がハッとし、青ざめていく。  ギャンブルと同じ感覚だったのだろう。もっと、もっといい結果を、望む結果をと夢中になって、大事なことを見失ってしまう。 「あなたの人生です。戻ることを無理に止めることは致しません。ですが、どうか有意義な余生を過ごして下さい」  私は奥へと下がろうとした。そのとき、 「まだ、使うことはできますか?」  彼はバカなことを言ってきた。 「はい。ただ、最後の一回になりますよ?」  医師でもないのに、私は余命宣告をする。彼にとっては重い一言だったはずだ。  彼は、彼女と同じような行動をした。  声を飲みこんで、真剣な眼差しで私を見た。 「どうしても、彼女のいる……彼女といる時間に戻りたいんです」  彼女がいなくては自分の時間など意味がない──震える声を押し殺し、彼は言った。 「かしこまりました」  私は再び奥へ戻り、変声器をつける。 「ソレデハ、目ヲツブッテ戻リタイトキノコトヲ思イ出シテ下サイ」  そうして、彼は過去へと戻った。  彼は、あと一年と生きないだろう。  彼自身、私の言葉でそれを悟ったはずだ。  私はひとつ、訂正しなければならない。
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