【T-2】 戻れるなら

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【T-2】 戻れるなら

 やっと見つけた。探し初めて二年かかった。──いいえ、二年で見つけられた私は幸運かもしれない。  偶然通りがかった森の奥の公園に、それは遊具の一部として置かれていた。  二年前、私は交通事故を起こした。  結婚間近の彼を失った。  その喪失は大きく、私はタイムマシーンのことを思い出して探した。そして、やっと──。 「イラッシャイマセ」  機械の声がする。 「オ望ミノ時間ヘオ連レシマス。タダシ、代償ハ貴方ノ余命、一年デス。ソレデモ、貴方ハ過去ニ戻リタイト願イマスカ?」 「はい」  私にはなにのためらいもない。  一年生きられなくなるだけで、彼が生きていてくれるなら。 「カシコマリマシタ。ソレデハ、目ヲツブッテ戻リタイトキノコトヲ思イ出シテ下サイ」  私は言われる通りに目を閉じる。  あの日、私が運転する直前へ。 「長い間、運転したから疲れたでしょ? 私が運転代わるよ」 「大丈夫?」  目の前には──彼が!  本当に戻れたんだ。信じられないけど、うれしい。 「うん。次のパーキングエリアまでだから……ちょっとだけど休んでね」  婚前旅行──に行くはずだった。とっても楽しみだった旅行。彼の助けになればと、普段運転しない私が運転すると言いだしたんだっけ。 「ありがとう。じゃ、すこし寝るね」 「うん」  タイムマシーンを使う前の彼の最後の言葉。このまま、永眠するとも知らずに。 「おやすみ」  事故を起こした場所は覚えている。だから、今度こそこの言葉を彼の最後の言葉にはしない。  グッとハンドルを握る。  今度は、おはようと言ってね。  婚前旅行もたくさん楽しもうね。それで、結婚もしたい。子どももほしい。  普通の生活でいい。  贅沢なんていらないから、家族になろうね。  幸せな家庭を築こうね。  未来は、私が握っている。
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