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由紀はイライラしていた。まさか、あのクリーンなイメージの消費者金融が、あんなヤクザまがいの男たちを職場によこしてくるとは思わなかった。男たちを会社の外に連れ出して、必ず支払いますと何度も頭を下げ、ようやく帰ってもらい、気まずさから由紀は早退し、今この電車に乗り込んだのだ。
ほんの少し、返済が遅れたくらいで、何なの?私のようなスペックの高い女には、それなりの物が必要になってくるのよ。以前は読者モデルだってやってたことあるんだから。会社も、私の価値をまったくわかっていない。会社がもう少し、私の価値に見合った給与を支払ってくれれば、あんな金融から借金なんてしなくて済んだのに。
それに、あの男。会社で一番のモテ男の鈴木悠人。ちょっと会社で有望株扱いされてるからっていい気になりすぎ。若いだけが取り柄の新入社員の女にそそのかされて、付き合い始めるなんて。そもそも、私に気があるはずだわ。以前はあれほど、チヤホヤしたくせに。
きっと、あの新入社員の女は、体を簡単に彼に捧げたのだろう。私のことは、高嶺の花とあきらめたに違いない。そして、既成事実を作って、できちゃった婚?よくやるわよ。必死さに、呆れちゃう。由紀は、目の前で子供を抱く、席を譲った女に、その新入社員の女性を重ねて見ていた。今に見てなさい。きっと彼を誘惑して、あんたのそのちっぽけな幸せなんてめちゃくちゃにしてやるから。
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