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そして、自分を注意した、隣に立つ中年男に自分の上司の姿を重ねていた。君もいい年なんだから。その言葉を思い出すと、悔しさに唇を噛んだ。私服で何を着ようと私の勝手。
「そんなヒラヒラしたワンピース。恥ずかしくないの?オフィスに着てくるには、露出度が高すぎでしょ。君ももういい年なんだからさ。」
そう苦言を呈され、由紀はカッと頭に血がのぼった。
「それって、セクハラ発言ですよね?」
そう反論すると、その上司は鼻で失笑した。
「とにかく、不必要に露出度の高いものを会社に着てくるのは感心しないな。君だけだよ?そんな服を着て出社してるのは。」
余計なお世話。私の美しい肌を反映できるのは、このブランドの服だけなのに。
元々、このブランドの服が好きなんだから仕方ないじゃない。読者モデルの時から愛用してるのよ?
あの忌々しい上司の顔と、隣の中年男の顔が重なり、由紀のイライラは頂点に達した。
そうだ。いいことを考えた。
「やめてください。」
由紀は、隣の中年男を睨みつけると、結構な大声でそう叫んだ。
「は?何を言ってるんだ?」
その男は、怪訝な顔で由紀を見た。
「さっきから、私の胸を肘で触ってるでしょ?最低!」
「バカ言うな。俺はそんなことはしていない!」
「車掌さん、この人、痴漢です!」
その後の流れを思い出すと、笑いが止まらなくなりそうだ。
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