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「お前が犯した罪によって、起こったことだから仕方ないよ。お前は、自分を注意した罪もない男を痴漢に仕立てあげて、その男は無実の罪を着せられて絶望。電車に飛び込んで死ぬんだ。そして、お前は、会社で俺を誘惑することに失敗して、俺と肉体関係があったというデマを会社に流して、俺の妻はノイローゼになって、子供を殺して自分も首を吊って死ぬんだ。どうだい?お前の思った通り、他の人間を不幸にできて、いい気分だろう?」
鈴木はニヤニヤしながら、由紀を見下ろした。
座席に倒れ伏した男から流れる血だまりが、由紀のパンプスまで流れてきて、血の匂いが電車中に広がる。恨めしそうに電車の中でぶら下がる女の足が由紀の背中を蹴った。
「ああぁあぁ、ごめんなさい。ごめ、ごめんなさい。」
由紀の目の周りは、マスカラが溶け出し、真っ黒になり流れ出し、顔は鼻水と涙でぐちょぐちょだった。
「終点、きさらぎ駅です。お忘れ物のないように、ご用意願います。」
アナウンスが流れると、電車はゆっくりとスピードを落とし、ドアが開いた。
由紀は、転がるように、電車を飛び出して、ホームに降り立った。
「由紀先輩?どうしたんですか?」
小便をもらした高級ブランドのワンピースは異臭を放ち、顔は化粧が崩れて、鼻水と涙でぐちょぐちょの由紀の目の前には、大きなお腹を抱えた鈴木の妻と、鈴木自身が驚いた顔で立っていた。
由紀は、先ほどの鈴木の態度を思い出し、頭にかっと血が上り、鈴木に掴みかかった。
「なんなのよ、あんた!偉そうに!マジ、ふざけんな!」
「な、何をするんだ。やめろ!」
殴り掛かろうとする由紀の手を、いとも簡単にひねりあげると、すぐさま警察が呼ばれた。
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