4人が本棚に入れています
本棚に追加
ネガイカナエタマエ
恋をしている。
片思いだけど。
隣のクラスの滝沢くん。
頭脳明晰のスポーツマンで爽やか系。誰もが認める超イケメン。私なんかお呼びじゃないって事くらい分かってはいるけれど、溢れる気持ちが止まらない。
「神様、一生のお願いです。滝沢くんが、私の事を好きになってくれますように」
今夜も部屋の窓から、夜空の星に願いをかける。すると
「了解致しました」
声がした方を振り返ると、そこには、見知らぬスーツ姿の男性が立っている。
「だ、誰!?」
「貴女が毎晩、願いを捧げている方の使いの者です。おめでとうございます。本日の当選者は貴女です。叶えて差し上げられますよ。貴女の『一生のお願い』を」
「ほ、本当?」
男性はタブレットの様なものを取り出すと、ピピピと何かを入力する。
「はい。これで該当者・滝沢涼介様は、寝ても醒めても貴女に夢中です」
「すごい。夢みたい。じゃあこれで、明日から滝沢くんと恋人みたいに学校で過ごせるのね?」
「は? 明日?」
「だって、滝沢くんと私は両思いになれたって事でしょう?」
「そうですが……」
男性は小さくひとつ咳払いをする。
「願いを叶えた代償に、貴女の命は頂いていきますよ?」
「……え?」
「貴女、言ったでしょう?『一生のお願い』と。願いは叶えました。ですから、頂戴させていただきます。貴女の、残りの人生を」
男性が片手を上げ、パチンと指を鳴らした。
と同時に、私の心臓もパチンと音を立て、視界が暗転した。
「信じらんない。亜沙美が死んじゃっただなんて」
「心臓発作だったんだって。あんなに元気だったのに……」
「滝沢くん、狂ったように泣いていたね」
「ずっと好きだったらしいよ、亜沙美のこと」
「悲劇だね」
「神も仏もないのかね」
遠くから、亜沙美の葬儀の様子を眺めていたスーツの男が呟いた。
「……神は、いますけどね」
最初のコメントを投稿しよう!