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長く尾を引いて消えていく耳鳴り、散り散りになって霞んでいく影の破片たち。
そこに残されたのはさっきの銀髪イケメンと……もう一人。
「こちらの病邪はわらわが祓った。案ずるな……、ん?」
硬直する僕を見つめる、黒目がちな瞳の女の子。年の頃は僕と同じくらい?
「こら白楼、神之介がくっ付いて来ておるではないか。どういう事じゃ」
眉をひそめて、藤色の着物を着た美少女が銀髪お兄さんに詰め寄る。肩の下で切りそろえた艶やかなおかっぱ髪がサラリと揺れた。
「ふむ。先ほど病邪に襲われたショックで霊魂が昂っているようでな、今は我らが視える。ついそのままにして来てしまったわ。はは……」
おっとりと笑うお兄さんは、最初の印象と違ってなにやらふんわり穏やか。
「なんじゃ、面倒な。わらわの傘を脳天に食らわすか。気を失えば目が覚めた頃合いには全て夢だと思うじゃろ」
こちらはその視線も言動も、印象通りピリッと辛口。
だがしかし! そんな事より何より、この子どこかで……いやいやまさか、でもそっくり……ていうか僕の名前知ってるし、……ええっ!?
「いや、放っておいても半刻も経てば魂も落ち着いて勝手に眠りに落ちよう。それよりも……」
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