【第一章】姫人形は笑わない

2/17
前へ
/65ページ
次へ
「う……? ……っわあああぁぁぁ!?」  コタツでウトウトしていた僕は、自分の悲鳴で完全に目を覚ました。 「な、な、なんでこんなモノが僕の部屋のコタツの上に……!?」  視界いっぱいに映りこんだソレが僕をじっと見つめている。 「こんなモノとはなによ、神之介(しんのすけ)。これはいわば、ウチの神社のご神体じゃない」  同じくコタツに入っていた姉の神楽(かぐら)が、小さな櫛と椿油の小瓶を手に呆れ顔をした。 「か、神楽姉(かぐらね)ぇ、なんで僕の部屋にいるの!? てか、ご神体なのはわかってるけど……僕がコレ苦手なの知ってるくせに!」  コタツの上に乗っているのは、一体の日本人形。  裾の長い着物に臙脂の傘。そして白狐のお面をチョコンと頭に乗せた、古くからウチに伝わる少女の人形だ。  我が家は代々【和楼稲荷(わろういなり)神社】の宮司を務めている。 「バッカみたーい。高一にもなって人形(イコール)怨念が宿っていそうとか、髪が伸びた気がするとか。あと、今夜は冷えるから我が家で唯一のコタツに入りに来たの。文句ある?」
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加