一章 ~二人の便利屋~

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「ちょ!ちょ!ちょ! ヤバい!マジヤバい!」 「ヤベェのはわかったから黙って運転しろよ!」  深夜2時。一台のトラック。乗っているのは二人の男。運転している男は左サイドの襟足だけを金に染めた黒髪のマッシュヘア。恐らくは20代前半だろうが童顔のせいか10代にも見える。 対して助手席には緩めのパーマを後ろに流したこげ茶の髪。ウェリントン型メガネが特徴の見様によっては運転手の兄のような男。  この二人、絶賛逃走中である。  二人は便利屋として輸送依頼を受けた積荷をクライアントが用意したトラックで目的地まで運んでいる最中。  恐らくは中身を教えてもらっていないこの積荷を狙っているのだろう。相当な金になる積荷なのだろうが、二人は積荷の内容に興味などない。金に目がくらみ積荷に手を出すなどプロの仕事ではないことを二人は心得ている。  指定された時間に指定された場所へ行き、トラックのキーを受け取り、目的地と到着指定時間だけを聞き、走り始めたのが2時間ほど前。その後1時間半ほど走ったところで運転手の男が尾けられていることに気づき、仮眠していた助手席の相棒を叩き起こした。誰かに起こされることを嫌う助手席の男は面倒くさそうに「巻け」と一言だけ告げるとまた目を閉じたが、運転手の男がスピードを上げたところで尾行に気づかれたと察した追跡者がセミオートマシンガンを発砲。流石に助手席の男も飛び起き現在に至る。
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