一章 ~二人の便利屋~

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 その後は追っ手もなく、静かなドライブ。大穴を飛び越えた後、再度二世に運転を代わってもらったチュグは助手席のシートを倒し、ぐったりと横になっている。と、しばらく走ったところで二世は路肩に車を停めた。 「……どうした? 便所か?」 「……いや……あのさ、チュグさん」 「あ?」 「……積荷、見ない?」 「はぁ? 見ねぇよ。この仕事のルール、知ってんだろ?」  クライアントの事情には非干渉。これが便利屋の唯一で絶対のルール。依頼があれば受ける。法にギリギリ触れるか、触れないか。 命の危険(リスク)は大きいのか、小さいのか。それだけが判断基準。便利屋なんてそんなもの。吐いて捨てる程いる便利屋業界で生き残るには信用と信頼、期待を上回る結果を残さなければならない。野菜の皮むきから核爆弾の輸送まで全力で確実にこなすのがこの業界の暗黙のルール。あと一つ、敢えて加えるならば人柄だろうか。  今回は運送といった仕事を引き受けたが、これに関しても同様。積荷の内容は詮索しない。  輸送を依頼してきたクライアントは二人にとって初の依頼者。なじみの客でないことを考慮すると人柄はどうでもいいのだろう。だが、この積荷は真っ当な運送屋に依頼できないからこそ便利屋なんぞに依頼しているのだ、中身は限りなくブラックに近いグレー。故に、積荷に下手に干渉し面倒事に巻き込まれても自己責任。命を落とすハメになっても文句は言えない。  最低限のリスクでそれなりの稼ぎ。これが便利屋として長く生きていく為のクレバーなやり方。それを二世は覆そうとしているのだ。
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