今更戻れませんっ

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「もういい。  気が済んだ。  大勢の招待客の前で、あいつに恥をかかせてやったからな」  だが、いやいやいや、と鈴は言った。 「帰れません」 「何故だ」 「いや、何故だって。  あんな派手に出てきて、やあっ! とかって帰れると思います?」 と鈴は手を上げて挨拶をする真似をする。  いや、征に、やあ、なんて気軽に声をかけられたことはないのだが。  今、側に居る、この困った征の兄よりも遠い存在だからだ。 「花婿から略奪されたけど、返品されました、みたいになってしまうではないですか」 と鈴が言うと、 「そんなことないだろ。  俺に無理やり連れ去られたといえば……」 と言いかけ、(みこと)は、 「そういえば、お前、途中までは自分の足でついて歩いてきてたな。  逃げたかったのか?」  何故だ、と言う。 「立派な花婿じゃないか」  いや、あんた、どうしたいんだ……と思ったのだが、ただの一般論のようだった。
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