今更戻れませんっ

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   鈴たちはバスを降り、下町を歩いていた。  さっきから、いろんなことが起こり過ぎていて、現実感がなく。  ウェディングドレスを着て、商店街を歩く異様さに気づいていなかった鈴は、道端のご老人に拝まれ、  なんでだろうな、とぼんやり思っていた。  商店街を抜け、信号待ちをし、横を通ったバイクの青年を、えっ? と驚かせながら、(みこと)の後をついて行くと、小さな整備工場に出た。  その工場の中央には、白い年代物のオープンカーがドンと座っている。  尊が覗くと、オープンカーの側にツナギを着てしゃがんでいた今風のイケメンが気づいて立ち上がった。 「尊。  それが(せい)の花嫁か。  さすが美人だな」 と鈴を見て言うので、いや、そんな、と鈴は照れたのだが、 「いい女とか言うんじゃないが、可愛いな」 とそのイケメンはカラッと笑って言ってくる。 「誰ですか。  この失礼な整備の方は……」
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