金の王子か、銀の王子か

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   ぱっと見、涼しげな木々に囲まれているのに、なんだか、やたらと、顔が熱くなる森に、鈴は居た。  目の前に湖があるせいか、お腹と足許ばかりがやけに冷える。  すると、周りの木々を映すその湖から、切り絵の絵本に出てくるような、ちょっとのっぺりとした顔の女神様が現れた。  広げたその手にはなにも持っていないのに、 「お前の落としたのは、この金の王子か?  それとも、銀の王子か?」 と鈴に訊いてくる。  いやいや、王子、何処ですか? と思いながらも、正直に鈴は答えた。 「すみません。  そもそも、王子、落としてません」
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