金の王子か、銀の王子か

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「あの、寝ちゃってすみませんでした。  運転かわりましょうか?」  尊さんにだけ運転させてて悪かったな、と思い、言ってみたのだが。 「いや、遠慮しておこう」 とやはり、前を見たまま、尊は言ってくる。 「あっ、私、運転、下手じゃないですよ?  たまに、サイドミラーが駐車場の壁に当たって、吹っ飛んでいくだけで」 「いや、それ、充分下手だよな……」 「そんなことないです。  うちの駐車場、前に何故か昔からある巨木があって、入れにくいんですよ。  それに、サイドミラーって、簡単に吹き飛びますよ?」  知らないんですか? という口調で鈴が言うと、 「……普通の人間は、あまりそれを知る機会がないからな」 と尊は言ってくる。 「大丈夫だ。  この先も俺ひとりで運転するから気にするな。  ちょっとサービスエリアに入るぞ」  尊はそう言いながら、見えてきた表示に従い、ウインカーを出した。
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