金の王子か、銀の王子か

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     サービスエリアで車を降りると、尊がずっと座りっぱなしなので、少し歩きたいと言い出した。  売店やレストランの横にある公園をぐるりと回っている小道があったので、二人で歩くことにする。  眼下に広がる海を見ながら、尊が言ってきた。 「行き損ねた九州に向かうとして。  何処か途中で寄りたいところとかあるか?」 「寄りたいところですか……」  うーん、と鈴が考えていると、 「例えば、なにか見たいものがあるとか」 と尊が言ってくる。 「ああ、パンダが見たいです」 「……パンダ?」 「あっ、そういえば、パンダ、伊勢の近くに居ましたよね?  伊勢とか寄ってみたいですっ」 「……逆方向だ」  伊勢はこっち、九州はあっち、と両手で、同時に反対方向を指さされる。  はは、そうでしたか、と鈴は苦笑いした。
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