4212人が本棚に入れています
本棚に追加
よし。
次、休憩したときには、言おう、と鈴は心に決める。
だが、駐車場に戻り、車のドアを開けながら、でもまた言ってしまいそうだ、と思っていた。
この人に、
『行くぞ、鈴』
って言われたら、はいって――。
「鈴」
とエンジンをかけながら、尊が呼びかけてくる。
「征のことだ。
どんな妨害をしてくるかわからないが。
頑張って、力を合わせて、九州にたどり着こう!」
そう言われ、此処でもやはり、
「はいっ」
と言ってしまう。
しかし、なんだかわからないが、もはや、九州にたどり着くこと自体が目的になっているな、と鈴は改めて思った。
そこにたどり着いたところで、きっと、なにがあるわけでもないのに――。
天竺も経典も、何処にもないのに、旅を続けている三蔵法師一行みたいだな、と鈴は思った。
最初のコメントを投稿しよう!