金の王子か、銀の王子か

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「だが、ちょうどよかった」 と弟に向き直った征に向かって、手を差し出し、尊は言う。 「征、スマホ貸せ。  これなら、足がつかない」  ……軽く意味がわからないんだが、 と思う鈴の目の前で、尊は征のスマホを取り、窪田に電話していた。 「窪田か。  まだ、なにもかも借りたままですまん。  ……ああ、大丈夫だ。  これは征のスマホだから。  いや、まだなにも和解してないが?」  なにも大丈夫じゃないですよっ? と思いながらも、鈴は、  やっぱり、なにやら、尊さんの方が大物な気が……と思っていた。  小心なところもあるけど。  いろいろ悩んでたくせに、結局、なにも考えないで、パッと動いてしまう辺りが――。 と思いながら、鈴は、教会から自分を連れ出したり、いきなり自宅のチャイムを鳴らしたりする尊を思い出していた。  征は呆れたような顔で、兄にスマホを使われたまま、黙って見ている。  そんな征を見ている自分に気づき、征が言ってきた。
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