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「いや、そういえば、昔は、俺は尊には逆らえなかったな、と今、思い出してたんだ。
なんだかわからないが、行動が唐突すぎて、反逆する前に、頭がついていけなかったんだ」
それで、いつも、そうやって、ぼんやり呆れて見てたわけですね、と子どもの頃の二人を想像し、鈴は少し笑ってしまった。
ちょっと微笑ましくもあったからだ。
だが、征は電話している尊を見ながら言ってくる。
「でも、俺は、いつか、自分がこいつの上に行ってやると思っていた」
そうですか。
尊さんの方はなにも考えてなさそうなんですけど……。
いや、なにもかも弟に取られたから、こんな行動に出たと言っていたんだったか。
だが、しばらく、一緒に居たからこそ、疑問に思うのだが――。
尊の母は、尊が跡継ぎの座から追いやられたことに腹を立てているかもしれないが。
尊自身は、そこまで跡継ぎというものに執着していなさそうな気がする。
あっさり、俺の赴任地は博多だとか言っていたことだし。
本当のところ、なんで、私を連れて逃げたんだろうな?
弟に対するささやかな復讐?
それとも、別の理由があるのだろうか? と思ったとき、征が言ってきた。
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