金の王子か、銀の王子か

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   ソフトクリームを買い、二人で並んで外のベンチに座った。  もう日は落ちかけている。  道の駅のすぐ後ろが山なのだが。  駐車場の奥の山際になにか光るものがふわっと飛んでいるのが見えた。  そちらを見ながら、 「……ヒトダマ?」 と鈴が呟くと、 「蛍だろ……」 と尊が言う。 「まだ居たんだな。  この辺り、ちょっと涼しいからな」  それにしても、なにがヒトダマだ、と尊に罵られる。 「お前、どんだけ、ロマンがないんだ。  しかも、ヒトダマだと思ってるのに、身を乗り出すな」  いや、ヒトダマだって、ロマンですよ……、 と思ったとき、鈴のスマホが鳴り出した。
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