金の王子か、銀の王子か

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  「いいのか? 鈴」 とスマホを手に遠くの蛍を見ている鈴に尊が訊いてきた。 「そういえば、お前のお母さんは、どうしてるんだ?  こういうとき、一向に出てこないが」  そういえば、自宅に帰ったときは、お父さんがお母さんと会わないようにと私を追い返したんだったな、と鈴は思い出す。 「確かに、ちょっとめんどくさいこと言ってきそうな人です。  だから、お父さんは接触させないようにしてくれてるんでしょう」 と言いながら、鈴はもう暗くなっているスマホの画面を見つめて言った。 「でも、今、完全に悪の手先になってる感じなので……  あ、失礼。  悪は征さんじゃないんでしたね」 と訂正したあとで、 「征さんの手先になってる感じなので、これから先はどうだかわかりませんが」 と鈴は言う。 「でも、うちのお母さん、なんだかんだで、ざっくりな人なんです。  だから、然程、心配することはないかと」
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