金の王子か、銀の王子か

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   結局、鈴たちは、そこから、そう走らないで行ける宿に泊まることにした。  ふぐのフルコースの食べられる宿にだ。  本当に食べたかったんだな……と思いながら、鈴は露天風呂付きの離れで、美味しくふぐをいただいていた。  昨日のビジネスホテルから一転、豪華な宿だが。  まあ、どっちも好きだな、と思いながら、鈴はふぐさしを食べる。 「あー、さっき、ほんとはあんまり、ふくって言わないらしいとか言ってすみませんでしたー。  ふくですよ、ふく。  口に入れるだけで、幸せいっぱいです」  夏なのに、クーラーのきいた部屋で、ぐつぐつと鍋の煮える音を聞いているのも贅沢だ。  よく冷えた冷酒もいろいろ選べるし。 「あー、もう最高ですっ」 と思わず叫んだ鈴を見て、 「……なら、よかった」 と冷酒のグラスを手にした尊が伏し目がちに笑う。
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