金の王子か、銀の王子か

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 どきりとしていた。  なんで、そんな顔するんですか。  嫌な予感がしてしまうではないですか。  なにか最後の晩餐的な雰囲気がしてきましたよ……。  尊がちゃんと博多に赴任するつもりなら、おそらく、今夜が最後の夜だ。  尊は明日、鈴を実家か、征の許に返して、それで終わりにするつもりなのではないか。  そして、自分は博多で仕事をしながら、清白(すずしろ)の跡継ぎである征から下されるであろう裁きを待つつもりなのだ。 「……なんで私を連れて逃げたんですか」  給仕してくれていた仲居さんが居なくなるのを待って、鈴は言った。
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