金の王子か、銀の王子か

47/88
前へ
/393ページ
次へ
「……そんなに遠くじゃない」 と言うと、あら、そうなの、じゃあ、今度行こうよと言ってくる。  そのカレー屋にか……。  どんな会話だ、と思っていると、 「ねえ。  式場から逃げ出すなんて。  あんた、その人のこと好きなの?」 と朋花は訊いてきた。  ちょっとどきりとしたのだが――。 「……ねえ、待って。  なんか食べてない? 朋花。  さっきから、なにか硬いものをかじってる音がするんだけど」  さっきから、カサカサパリパリ電話の向こうから聞こえてくるのだ。  お煎餅かなにか食べながら、かけているようだ。 「まあ、いいじゃん」 と言ったあとで、朋花は、 「ねえ、あんた、そのまま、ずっと逃げてるつもりなの?」 と鈴に言ってきた。
/393ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4212人が本棚に入れています
本棚に追加