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しばらく二人で黙ってバスに乗っていた。
鈴も困っていたが、この男も困っているように思えた。
男の名は、清白尊。
名は清白だし、顔は瓜二つ。
清白征と双子なのかと思ったのだが、違うと言う。
「俺たちは異母兄弟なんだ」
それにしては、そっくりだな、と鈴が思って見ていると、
「母親同士が双子なんだ」
と腕を組み、前を見たまま、尊は言う。
「うちの母親は、妹に夫を寝取られ、俺は腹違いの弟に跡取りの座を奪われた」
そ、それは最悪ですね……と他人事ながらも思っていると、尊は溜息をつき、
「降りろ」
と言って、ボタンを押そうとした。
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