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「魔法使いは、いるよ」
「現実に、ってこと?」
「そうさ。あたしゃ、会ったことがあるからね。雨を降らせてくれた」
「へぇー」
「おや? 意外と素直な反応だね」
「うん。……オババは嘘をつくようなタイプじゃないからね。で、どんな人だったの?」
「……普通の人さ」
オババの視線は、また空を向いている。そこに誰かの面影があるかのように。
「ただ……」
「ただ?」
「【七色の傘】をさしていたよ」
「七色の傘……」
「あぁ。とても綺麗だった」
少女に返ったオババの笑顔。年を重ねてしわくちゃになってしまった肌も、今は当時の張りが戻っている。そんなに美しいものだったのだろう。
「僕も見てみたいな」
「……ふふ。そうだね、見れたらいいね」
「どうしたら、魔法使いに会える?」
「それは難しい質問だ。けど……願っていてごらん。きっと、来てくれるから」
「うん! オババ、楽しい話を聞かせてくれてありがとう!」
「こんな老いぼれの話でよかったら、いつでも聞きにおいで」
「うん! またね!」
「気を付けて帰るんだよ!」
オババに手を振り、僕は自分の家へと向かった。オババとは事情があって、今は一緒に住んでいない。一緒に住めたらいいのだけど、難しい話らしい。
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