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ぎくしゃくした二人は、ここにはいなかった。仲がよかったころに戻ったみたい。
「……母さん。ずっと、ごめん……」
「あたしゃ、何も気にしていないよ」
「でも……」
「たとえ、アンタと血が繋がっていようがいまいが……アンタはあたしの息子だよ」
オババのカミングアウトに驚いた。こんなに似ているのに、二人は親子じゃないの?
「あー、アンタらには話してなかったね」
僕と母さんを見て、いたずらっ子の笑みを浮かべるオババ。僕より先に母さんが「どういうことですか?」と叫んだ。
「あたしゃね、この子のお父さんの再婚相手なんだ。だから、この子とは血の繋がりが無い。けど、不思議なくらい似てるんだ」
「えぇ。とっても……」
「世の中、不思議なことばかりさ。……まさか、自分に死が近づいているなんてね」
悲しみと恐怖が混じった笑い顔。ずっと、オババは病気と闘ってきた。けれども、体に限界が近づいていた。
最近は入院したままで、オババは会うたび「家に帰りたい」と願っていた。母さんは、オババの最期の場所を大好きな家で迎えさせようと決意した。僕も、それを望んだ。帰りたい場所に、オババが望む場所に……。
「でも、今が最高に幸せなんだ。これまでにないくらい、幸せなんだ。これも全部、アンタらのおかげだよ。ありがとうね」
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