夏祭り

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石長さんが家に来てすぐ、祖母が浴衣を着せて居間に来ると、見違えるくらい綺麗になっていた。 「え?どうしたの?」 兄は石長さんがもう着るのなら着ていくと言って、祖父に着せてもらって入ってきたが、そちらもいつもと雰囲気が違い、浴衣は濃紺。 裾だけに柄が入っているが、大人の男といった感じで、カッコイイ。 石長さんはいつもの地味な感じの服とは全く違い、薄いピンクに白のストライプ。そして小さな小花と、アクセントに大きな花があしらわれた浴衣だったが、髪が結ってあるせいか、普段とは違う化粧のせいか、とても若く見える。 「石長さんすっごく綺麗!」 「ほほほほほ、本当か?この浴衣は最近の流行りと聞いて買ったのはいいものの、若い子が着る柄ではと……」 「そんな事ないよ。髪も上げてた方のが似合うよ!」 「うん、いつも下ろしてるから、新鮮だね。よく似合ってるよ」 「じ、純平さんも……よく着物が似合ってます」 「さ、あなた達は先に出るのでしょう?お昼は神社で食べるの?」 「そうなるな」 「ちゃんと石長さんを色々と連れて行ってあげるのよ?」 「分かってるって。翔平じゃあるまいし」 「俺かよ!」
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