夏祭り

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祖父に言われるままに弓を出して構え、真ん中を狙うものの、少し右にずれたが何とか黒い塊のようなものは消えた。 消えたと言うよりは散らばったかのようにも見えるが…… 「爺ちゃん、これ消えてないんだけど」 「仕方ない……婆さん、扇子の風で追い払ってくれ。私の竹刀では何ともならないから」 「ほほ、任せてくださいな」 祖母が扇子をひと振りすると、また集まって塊だしていた黒いものが風のお陰で少しずつ消えてはいくものの、完全には消えない。 「あら、やっぱり練習不足なのかしらねぇ」 「十分!翔平、残りは槍の部分で祓ってしまいなさい。私も近いものは片付ける」 祖父と何とかかたをつけて見えた祠の中はちゃんと祀られており、そこに三人で手を合わせてからまた道に出て神社へと向かう。 思っていたよりも人が多く、浴衣姿の人や早めに行ったであろう小さな子供連れの人がいて、花火の場所取りに河原のほうに向かっている。
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