消える記憶

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「大丈夫。保険にも入ってるし、特約だってケチったりしなかったんだから。思い出があるものは残念だけど、これからまた色んな思い出が出来るだろうし――。ここにある神秘(アルカナ)を頼れば、取り戻すことが出来るのかも知れないけど……」  キラリ、と螺旋の一角で、何かが光った。 「もう神秘(アルカナ)はコリゴリだよ……」  肩を落として、郡司は言った。 「その言葉を忘れないでね」  朝比奈リラが、静かに微笑む。冷たい言葉でもあったかも知れない。 「持ち出された【アルカナ】は、またここに返しに来るよ」  郡司が言うと、 「そう出来ればいいわね……。人が無欲になれるとは思わないけど」  突き放すような言葉が返って来た。  信じてここに招いた人間に裏切られ、この螺旋(スパイラル)のモノを持ち出されたのだから、彼女がそう思うのも無理はないのかも知れない。痛い目に遭った郡司なら、今後一切【アルカナ】に関わろうとは思わないが、その力だけを目にした者なら、他人の命を奪ってでも手に入れたい、と思うに違いないのだから。  だから、なのだろうか。彼女が自分で【アルカナ】を回収しないのは。欲に駆られてそれを手に入れた者たちが、痛い目に遭うのを望んでいるからなのだろうか。もう二度と、【アルカナ】を手にしたい、と思わないように……。 「ああ、そうだった! 一つだけ教えてくれないか?」  郡司は、ここを後にする前に振り返り、     
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