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星のアルカナ
行き先は、取り敢えず郡司の自宅だった。自分の車は駐車場に置き去りにし、男が言う通りにタクシーを拾った。
「……付けられてる様子はないな」
男は後ろを気にしながら呟くと、
「悪いことは言わない。それは人殺しをしてでも欲しがっている奴らがいる【大アルカナ】だ。早く手放した方がいい。――あんたも見ただろ、車に撥ねられた男を?」
運転手に聞こえない程度の小声で、耳打ちをする。
やはり、あの男もこのカードに関係していたのだ。
「俺はこんなカードが欲しい訳じゃない。紗夜が――妻がどこに消えたのか知りたいだけだ。妻が戻って来れば、いつでも手放してやる」
まぎれもない本心だった。
「OK! その時はオレのものだからな」
男は言った。つい今しがた、持っているだけで殺される危険のあるカード――秘密だと言ったばかりなのに、そんな危険があっても自分のものにしたいのだろうか。
「――妻が消えた理由を知っているのか?」
郡司は訊いた。
「ああ。その【アルカナ】を使ってテレポーテーションしたのさ」
「テレポーテーション?」
――何を馬鹿馬鹿しいことを!
思わず、そう言ってしまいたくなる返答だった。
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