星のアルカナ

1/4
前へ
/250ページ
次へ

星のアルカナ

 行き先は、取り敢えず郡司の自宅だった。自分の車は駐車場に置き去りにし、男が言う通りにタクシーを拾った。 「……付けられてる様子はないな」  男は後ろを気にしながら呟くと、 「悪いことは言わない。それは人殺しをしてでも欲しがっている奴らがいる【大アルカナ】だ。早く手放した方がいい。――あんたも見ただろ、車に撥ねられた男を?」  運転手に聞こえない程度の小声で、耳打ちをする。  やはり、あの男もこのカードに関係していたのだ。 「俺はこんなカードが欲しい訳じゃない。紗夜が――妻がどこに消えたのか知りたいだけだ。妻が戻って来れば、いつでも手放してやる」  まぎれもない本心だった。 「OK! その時はオレのものだからな」  男は言った。つい今しがた、持っているだけで殺される危険のあるカード――秘密(アルカナ)だと言ったばかりなのに、そんな危険があっても自分のものにしたいのだろうか。 「――妻が消えた理由を知っているのか?」  郡司は訊いた。 「ああ。その【アルカナ】を使ってテレポーテーションしたのさ」 「テレポーテーション?」  ――何を馬鹿馬鹿しいことを!  思わず、そう言ってしまいたくなる返答だった。     
/250ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加