一枚のカード

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一枚のカード

 ――そう。あの時、確かに何かが、落ちた。  紙のように薄く、軽いものだ。  歩道を探すと、植え込みの陰にそれらしきモノが垣間見えた。  ――あれだろうか?  手に取ると、それは一枚のカードだった。トランプかと思ったが、裏返してみると、絵札の一枚で……。上部にローマ数字で【ⅩⅦ】と書かれ、下部には【THE STAR】という、絵を説明する言葉が書かれている。両手に水瓶を持つ裸婦の頭上には星が輝き、周囲にも小さな星が瞬いていた。  こういうものに詳しい訳ではないが、恐らく、タロットカードの一枚ではないだろうか。占いなどに使う、あれである。  だが、紗夜がそんなものを持っていたという記憶はない。雑誌の巻末にある星占いなどは時々見ていたようだが、特に信じている風でもなかったし……。第一、これが紗夜が消えたことにどう関係しているのかも判らない。それでも、今は唯一の手掛かりだった。もともと紗夜が持っていたものでないのだとしたら、尚更。  他に何か手掛かりはないだろうか。     
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